canio’s blog

モデラー/フィギュア原型師・太刀川カニオのブログです。

ドイツ・ドレスデンのメタルフィギュア、Peipp(パイプ)社

デジタル造形はこのところ一気に普及しましたね。 先日8月に行ったドイツ・クルムバッハの国際メタルフィギュア市でも、特に1/48以下の小さなミニチュアフィギュアにデジタル造形による原型と思われるフィギュアが多く見られました。 まぁあれだけ一般的にも騒がれたら具体的に利用価値のある分野ならすぐに飛びつきますよね。 また需要が増せば価格も下がり技術も向上するスパイラル状態になっていると思います。
そもそもインジェクションフィギュアをリードしてきたプライザーやタミヤといった大手だって、精密習い彫刻機でアナログによって大きい原型からでスケールダウンしてチュアを作ってきたわけです。 これまでは高価な専用機械を買える大手だけが出来たことが、今までは3D造形の普及のお陰でガレージレベルで出来きるようになっただけの話で。 特に手原型で製作が難しいミニチュアサイズのフィギュアはデジタルに置き換わっていくんでしょうねぇ。 ただ手原型の風合いを残したものってそれはそれで残るような気もします。
メタルフィギュアといえば,私のお気に入りはドイツ・ドレスデンのPeipp社です。
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基本的にドレスデンの地元ネタの言わばヒストリカルフィギュアメーカなのですが、独特のディフォルメによって我々がよく知るリアル至上主義のいわゆる「ヒストリカルフィギュア」の流れとは一線を隔しています。
確かに本物のようなリアルなフィギュアはすばらしい。ですが、ミニチュアフィギュアの楽しみっていうのはそれだけじゃないんですよね。ドレスデン旧東ドイツだった時代から活動されていたと思うので、独特の進化をしたとこもあると思います。フリードリッヒ二世時代や旧東ドイツ軍のラウンドフィギュアなどテーマも独特です。初めてメタルフィギィア市に来たときに見つけて以来ファンになり、毎回なんかしら買ってしまいます。
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これは30年戦争のシリーズ。サイズは54mm(っていってもちょっと大きく60mm以上ある(^^ゞ)
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この辺りのバロックの宮廷シリーズも54mmが中心。お茶の間のショーケースには血なまぐさい兵隊フィギュアよりこちらの方が似合いますよね。
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これは前回買ったWW1のドイツの砲兵隊(54mm)。リアルではないんですが、このなんとも言えぬ「味」がいいですよねぇ。手造型の暖かさというか。 これから先、こういう「味」のある作家性の強いアナログなフィギュアのファンも一定数はいて欲しいですねぇ・・・

というわけで塗ってみたものをご紹介します。
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以前に買ったフリードリッヒ2世時代の45mmのシリーズからロココ調のドレスを着たご婦人です。
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この辺は54mmとか50mmとか45mmとかありますけど適当ですね(^^ゞ 出来なりっていうか。 要するするに1/35付近のフィギュアです。 Peippの製品の主力、原型師のお爺さんが得意なのは先に紹介した54mmのクラスで、この小さいサイズのフィギュアは比較的動きがなくてちょっとさびしい感じですけどね。
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塗って見るとなかなかどうしていい顔してます。 本当はこのフィギュアの塗りには昔ながらの油彩が合うと思うのですが、結局ファレホでのアクリル塗りにしちゃいまいした。 勝負早いしな(^^ゞ
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スカートのグラデーションとか楽しくなっちゃってついつい方法が目的になっちゃったんですが不毛なのでほどほどでやめときました(笑)
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リアルに塗るっていうんじゃなくて、造形を活かして可愛く塗るんですね。 もうこれキャラフィギュアですよ。 マンガです。 Peippの魅力ってそういうことなんでしょうね。 他のメーカーのと混ぜて使うってんじゃなく、そのキャラ性で特に群衆になると生まれるその世界感が良いんでしょうね。
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なにかマイセンの陶の置物みたいな工芸品的魅力がありますよね。 で、ミニチュアフィギュアって、こういう俯瞰の絵で、そこに置いてある存在感がいいんですよね。 このフィギュアって、それを見越して作ってあるようにこの絵がいいです。
リアル造形を目指してるんだけど技量が足らずに味が「出てしまってる」のではなく、初めからこういう作風なんですよね。それは似ているようで全く違うところです。 こういうのを見るとリアル系のフィギュアとキャラフィギュアとの明確な境なんて無いんだなと思いますね。 またそうした線引き自体ナンセンスかなぁと感じます。
Peipp社は原型氏のお爺ちゃんと奥さん、今はマネージメントをやってる息子さん、でその息子のお孫さんも店番してましたが家族でやってるディーラーです。 息子さんは原型製作はやらないのでこのフィギュアづくりはお爺ちゃん一代で終わりでしょう。 あとはその原型を財産に引き継がれていくんでしょうか。
ちょっとそういうの憧れるところもあり、2年後の国際メタルフィギュア市にはディーラー出店することにしました。
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Peipp Minituren Dresden
http://www.peipp-miniaturen.de/shop/index.php?PHPSESSID=3bea3246c0485c5a0edb717fb8e7f5b1