canio’s blog

モデラー/フィギュア原型師・太刀川カニオのブログです。

1/35 女子高生『さやか先輩』

f:id:canio_plus:20140224010736:image:w400

アーマーモデリング2014年11月号のプラ美コーナーに、拙作のモデルカステン・1/35レジンフィギュア「さやか先輩」のペイントワークが紹介されてます。記事は「まぁ こういう変態もいます(笑)」的な簡単な紹介でもありましたので改めてご紹介します。
記事にも書きましたけど今回はキットの造型には全く手を加えず塗装のみで楽しんでみました。

f:id:canio_plus:20140114001432:image:w200f:id:canio_plus:20140123234638:image:w200

今回は試しにピンク立ち上げで塗ってみましたが、肌は結局隠蔽力の強いファレホで塗りつぶしちゃうんで、このサイズだとあんまり意味なかったですね。

f:id:canio_plus:20140222000406:image:w400

いつものように瞳は油彩で描いて、肌はファレホ、服はアクリラガッシュです。

f:id:canio_plus:20140222001525:image:w400

実は日本女性のフィギュアを塗るのってこれが初めてだったんですよね。いつもの白人の肌の色ばっかり塗ってますが、健康的な女子高生って感じにちょっと色味を変えてみました。どうでしょうかねぇ。

f:id:canio_plus:20140222001124:image:w400

f:id:canio_plus:20140222002234:image:w400
実は今回面白かったのは白いセーラー服の陰影なんですよん。 こうやって正面からのライトでもちゃんと陰影が残ってることでお分かりかと思いますが、この白服の陰影は全部塗りで表現してあるんですよ。白のグラデーションはシェップ御大も名著「How To Build Dioramas」の中でもっとも難しいとしていた塗装です。 まぁまぁ自然に塗れたので、ちと嬉しい(^^ゞ

御大はその名著に、このようなミニチュアフィギュアの変態的な描き込み(笑)についてもこのように書かれてます。
「細部がどうなっているのかは知識的な情報であって、見えないような細部ディテールは正しい視覚情報ではない。それを省略して見えるままを描いて細部を想像させる表現の方がよりリアルだというのはレンブラントの絵にも見られるように絵画で確立された表現である...」と。
要するに細部ディテールの再現は適切な距離で見た時に全体として自然に表現できないならむしろやるべきでないということなんですよね。確かに無理に細部を描き込んでしまって、あるいはディテールを追加してしまって違和感を出すよりはやらない方が無難ですし、リアルに見えるでしょう。また1/35でここまでやる方が無粋であるのかもしれませけど、無粋なほどイカれた模型に萌えるっていうのはモデラーの性でしょうか(^^ゞ

最後にこのJKフィギュアシリーズについて。記事にも書きましたが、このシリーズのフィギュアは1/35にも関わらず、陰影や表情なども彫刻で全て表現してやろうという意欲で造形されていて、造形の彫刻が深く、可愛くできてるので、墨入れよろしく塗料を流すだけでも簡単にリアルで可愛い女子高生が塗れます。最近タミヤの全身スキャン造形から開発したフィギュアが話題になってますが、逆に言えば実際の1:1のスキャンデータそのままでは1/35で起伏が全く表現できずに、のっぺら坊になってしまうと思いますね。勿論それに描き込みを加えればミクロで言えばよりリアルにできるとは思います。しかしそれは白い紙にリアルな顔を描けと言われるがごときもので、それをものにするには相応のスキルが必要になります。誰でもが簡単にリアルで活き活きとした表情を得られるフィギュアというのは手造形であろうが、デジタル造形であろうが、それ相応に工夫された造形でなければならないということなんだと思いますね。このフィギュアの原型を担当されてる辻村さんはご自身も凄腕のフィギュアペインターなので、その辺りのツボを心得た造型になっているのだと思います。
そもそもモデラーは服の皺などの起伏がより深くディフォルメされてるフィギュアを「モールドがハッキリとしていて塗りやすい」と賞賛し、そのディフォルメモールドが作る陰影すら弱いとして塗装で陰影を足して立体感を増してるんです。 スキャンデータを使うことでリアルになることは間違いないですが、インジェクションのミニチュアキットで、立体スキャンを出力した人形がそのままで「一般モデラーが思うリアルなフィギュア」になるとは思えないんですよねぇ。また単にリアルなだけが良いフィギュアの条件でもないとも思いますし、スケールに応じたアレンジも必要だと思います。しかしながらスキャンデータを有効活用することが、その近道であることもまた間違いないでしょう。これからのフィギュア造型はデジアナ複合技術になっていくのでしょうねぇ。